突然の帰省の交通費も借り入れ

あれは都会での一人暮らしをし始めて1年が経った頃のこと。
もうすっかり一人にも慣れ、かえって気ままな生活が楽しいと思うようになっていました。
貯金もせず、毎日飲んだり食ったり、遊ぶことにお金をつぎ込んで、何かあった時の備えなんて、その時は考えもしませんでした。
ちょうどそんな時、女手一つで育ててくれた母親が倒れたという連絡を受けたのです。
さすがに慌てました。
すぐに実家へ帰ろうと会社にもその旨を伝え、そして荷物を取りにアパートへ戻る時に気付いたのです。
お金がないことに。
ちょうど悪いことに給料日前。
銀行の預金はほとんど使ってしまい、田舎まで帰る切符代も残ってはいませんでした。
情けなかったです。
本当はこういう時にこそ傍にいてやらなければならないたった一人の息子が、金欠で帰れないなんて…。
とにかく何にでもすがろうと思いました。
すぐに思い出したのは、テレビで流れていたキャッシングのコマーシャル。
たしか、即日受付も可能だと言っていた気がして、街のATMのようなところを探して飛び込みました。
最初は不安でしたが、受付の優しい女性の声がして、緊張は一気に晴れたのです。
必要事項を聞かれ、淡々と手続きは進んでいきます。
一番緊張したのは、審査にかかる時でした。
かなり前に、こういうところで借りたお金の返済を遅らせてしまったことがあったからです。
ブラックリストに一度載ってしまった客は、審査には通りにくくなります。
だから祈るような気持ちでした。
これが頼みの綱でしたから。
しばらく経って、審査に通ったことを告げられました。
ほっとしました。
なんだか、今後は心を入れ替えようとさえ思うほどうれしかったです。
お陰様で、母親のお見舞いをすることもできましたし、我が子の顔を見たからか、思った以上に回復も早く大事にも至りませんでした。
ピンチを救ってくれて本当に助かりました。